2012年6月21日木曜日

6月20日・銀座いそPトークショーもくじ

「午後のサロン Vol.149 磯智明さん 『平家一門にみる家族の絆』」 備忘録

2012年6月20日・銀座十時屋ホール 13:30開場 14:00開演
[出演]磯智明(「平清盛」プロデューサー)・加藤実(ピアノ)
(敬称略)

※注意 メモ書きとぼんやりとした記憶が元になっております。信用度はあまり高くありません。


【構成】

talk:「平家一門にみる家族の絆」磯智明

music:加藤実(ピアノ)
遊びをせんとや
夢詠み
アイノラ叙情曲集 吉松隆の世界~4つの小さな夢の歌~
加藤実さんの曲2曲
平清盛メインテーマ

質問コーナー

座談会

トーク概要

内容ざっくりまとめ(時間がない方はここだけお読みください)

・戦国と幕末じゃない時代をやろう、ということになった。坂の上の雲と朝ドラで明治と戦前戦後までやったので、遡ろうということに。
・脚本の藤本さんとも考えて、平成版の平家物語を作ろうと決めた。
・平家は一門の絆が非常に強かったので、今の時代にもいいんじゃないかと。

・キャスティングと平行して時代考証の先生を決める。10人くらい専門家にお会いして話をしたけど全然説が違う。中世はまだ分からないことが沢山。
・今回は二人入っていただいているけどお二人とも説が違う。なんか学説が西と東で割れる。
・史料研究に考古学の発見&科学のメスが加わって、昔と今では学説もずいぶんと変わっている。

・松ケンはすごい。松ケンが出るなら出るって言ってくれた役者さんがたくさん。中井さん玉木さん松田さんがそう。
・上川さんには自分が助監督の頃からずっと「僕が大河やったら出てください」と言っていて、今回出てもらった。
・地味な主人公に見えるかもしれないけど、彼によってドラマが成り立っている。
・運動神経もいい。比べ馬のシーンでは、自然と負けなければいけないのだが、見事な馬術だった。

・衣装はその人の性質や成長を表す。頼朝と義経を逆算して象徴しているのが由良と常磐の衣装。
・時子はピンクから紫に衣装が変わっている。成長の証。最終的には時子に平家の絆が集まる。

・最近の撮影。スタジオの風景写真など。「船のシーン取ってます。海は合成するけど水は美術さんがバケツでばしゃーっと」

・「遊びをせんとや」は大事なテーマ。藤本さんは登場人物一人一人に「遊びをせんとや」=夢中になって生きる、という人生を歩ませようとしている

・ツイッター企画は好評。もともと大河は内容が難しく、お父さんに解説してもらいながら見たりという見方だった。
 今はPCを前にして見ている人が多いようで、調べたことと違うという意見ももらう。
 それならこっちも調べて作っているので、提供しようと。
 ツイッターで情報を共有しながら見るというのは、テレビの新しい見方なのではないかと思っている。

・スピンオフや未公開映像を見たいという意見はよくいただく。
 
DVDに未公開映像を…ということですが、僕にその権限はありません。(なんですと!)
 伝えることは出来ますが…NHKエンタープライズが決めることなので。
 未公開映像でも、たとえば編集段階でカットされて、背景のCG合成や音の処理などされていないものも多いので
 それを商品として出すためには作業が必要で、それには予算も時間もかかる。
 が、NHKエンタープライズも、これだけみなさん録画して見ているんだから特典をつけて買って欲しいとは思っている。
 
「こういう特典つけてくれないと買わないぞ」というのが一番いいのかもしれません。

特典つけてくれの嘆願はこちらへ。→【NHKエンタープライズ お客様問い合わせページ】

いそPレポ1

<会場の様子>

平日の銀座に集う人々とあって、客層は銀座っぽい年輩女性が多め。
(間違ってもロフトプラスワンの平清盛ナイトには来ない感じ)
小さなホールに白いグランドピアノ、お客さんは椅子を並べて見る感じ。
ドリンク&お菓子サービスつき。お菓子は「新平家物語」でした。

<いそP登場>
いそP、壇上へ。ご挨拶後、早速大河ドラマの話へ。以下抜粋します。

今回のセミナーも女性の方が多くおいでくださっていますが、ここ数年、大河ドラマにご意見をお寄せいただくのは女性の方が多いです。
平清盛もそうで、女性の方はかなり熱いメッセージをくださる。逆に、男性からのご意見は「画面汚い」「もう見ない」みたいな。(会場笑)
女性は脇役のキャラに思い入れが強い様子。男性は理想のヒーロー像を求めるご意見が多いです。

プロデューサーの仕事は大河ドラマの大枠を決めることです。題材はどうする、脚本家は、キャストは、音楽は、時代考証はどうする。そして予算の管理も。
脚本の大まかな流れも脚本家とプロデューサーでうち合わせして決めます。出来上がった脚本を実際に映像化するのがディレクターです。

今回は、2012年の大河ドラマを担当するようにと言われた時に、戦国・幕末に偏りすぎたのでそれ以外という話がもともとありました。
明治は坂の上~でやったし、戦前戦後は朝ドラでやっている。じゃあ遡るしかないね、いうことで、
平成版の平家物語はどうだろう、平家一門の絆を描くことは今の時代に合っているのではないかという話になりました。

題字については、毎回いろんな方面から描かせてくれとオファーがありますが、今回は金澤翔子さんにお願いしました。
ダウン症の書家ということで、それだけが話題になってしまうのではないかと思ってお母さんとも話をさせていただき、結果的にお願いすることに。

キャスティングを決めるのと平行して、時代考証の先生も決めます。今回は中世の専門家で、自分で学説を持っているメジャーどころの先生に10名ほどお会いしました。
でも皆さん自説がバラバラで。たとえば清盛=白河院の落胤という設定は視聴者の方からも反響が大きかったのですが
忠盛と正妻の子ではないという所までは一致していても、じゃあ誰の子かというところで、今入っていただいている時代考証の先生お二人とも意見が違います。
神戸大学の高橋先生は落胤説をとりますが、東大の本郷先生は否定しています。割と西と東で割れる感じです(笑)。
たとえば武士がなぜ生まれたかという話も、関東の先生は「関東の豪族が土地を守るために武装したのがおこり」と言いますし
関西の先生は「都で貴族を守る仕事をしていた集団が武士になった」と主張します。
中世史は謎に満ちています。自分たちの国の歴史すらじつはハッキリとは分からない。面白いですよね。
最近は色々な新説が出てきています。貴族達の史料をつきあわせて、おそらくこれは本当にあったことだろうと検証していくのが主だったのですが
最近神戸で色々な清盛関連の遺跡が発掘されて、考古学や科学といったアプローチからも新しい発見が生まれています。

いそPレポ2


史実とフィクションについて
大河ドラマは「このドラマはフィクションです」と言い切っていません。
フィクションは事実への反語ですが、「事実」は何かは誰にも分からない。ゆえにNHKではフィクションという言葉は使いません。
難しいという意見もありますが、これ以上わかりやすくすると時代考証の先生が怒ります(笑)。
韓国ドラマのように分かりやすくないのは何故かという質問も受けますが、韓国ドラマは国策として作られたエンターテイメントなんです。
史実とは違う部分も多いようですが、外国にも売れるコンテンツとして作っている。
ですが、日本でこのように史実を無視した娯楽作品ををやってしまうと、国民性なのか、非常に反発があるみたいです。
自分たちのルーツに対して非常に真摯なんですね。
今回の作品はかなり史実に沿って作っています。

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(松ケン清盛の写真が写ります)
最近凛々しくなった清盛です。昔は汚い汚いと散々…(笑)
松山君は本当にすごい役者さんで、リハと本番で演技を変えていくんですね。一瞬一瞬で芝居が生きている。
そうすると一緒に芝居している相手は驚きます。俺の解釈違ってた?と。そして、その場で考えて演技しなければいけない。
中井貴一さんや玉木宏さん、松田翔太さんなどは特に、それが非常に面白いと言っています。

キャスティングを決めていくのもプロデューサーの仕事です。
たとえば上川隆也さんは、自分が助監督だったときから「俺が大河をやったらぜひ出てくださいね」と冗談で言い続けていて、
今回実現したので、出て貰いました。
玉木さん・阿部さん・松雪さんは過去作品でのお付き合いからオファーしました。
でも僕の力だけで役者さんがOKしてくれるわけじゃないです。今回は「松山ケンイチが主役なら出よう」って方が沢山いらっしゃいました。
業界では、松山ケンイチは毎回演技を変えてくる、すごいやつだ、ってのは評判なんですね。
さっき言った、中井さん・玉木さん・松田さんなんかはそういう感じです。
地味に見える主役かもしれませんが、彼によってドラマが成り立っています。
運動神経も良くて、たとえば比べ馬のシーン。彼の馬術で「一生懸命馬を走らせてるけど負けた」というシーンになってます。

松山君が主役なので、メインキャストは若いです。松山くん27、松田くん26、玉木くん31(?)。
大河ドラマも大御所と言われる俳優さんがご病気したりして徐々に抜けていっていますが、この世代が今の映像シーンを支えています。
彼らに共通するのは真面目であること。昔のように、撮影が終わって銀座で豪遊して徹夜のまま翌日の撮影!っていう人はいません。
話を聞くと、松山くんなんかは青森の出身で、地元の友達と話すと「仕事がない」みたいな感じだそうで。
そんな中、自分は役者という仕事があって、このような環境で仕事が出来て本当に幸せである、と。真面目です。
月~金はリハと撮影、土日は育児。今日は奥さんが忙しいから松屋で牛丼食べてきましたー、みたいな。
本当に真面目です。

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時間なくなってきたので駆け足気味にいろんな写真が写ります。
衣装について。常磐と由良は義経と頼朝から逆算して衣装の色を決めています。常磐は暖かなオレンジ。
時子は夢見るお嬢様から武家の棟梁の妻としての自覚が芽生え、ピンクから紫に衣装を変えました。
時子は最終回まで一門を支えます。平家一門の絆は彼女に集約される。彼女の芯の強さを見ていてください。

スタジオの入り口の写真や、鎧姿のエキストラさん、清盛の小道具などが映る。
バケツに入ったコーンスターチやCG合成の話、船の撮影風景などなど。
多分、美浜のセミナーと同じ写真&同じ話なので割愛。「美浜大河セミナー」あたりでぐぐってください。

いそPレポ3


このへんで磯Pの持ち時間は終わり(1時間)。引き続き加藤実さんによるピアノ演奏タイムです。
大河ドラマ関連は以下の4曲。

遊びをせんとや
夢詠み(紀行のテーマ)
アイノラ叙情曲集 吉松隆の世界~4つの小さな夢の歌~(4曲のうち「春」が劇中挿入曲。重盛誕生のシーンなど)
平清盛メインテーマ・ピアノver

生演奏は素晴らしくかっこよかったです。聞き入りました。
特にアイノラ叙情曲集 春(5月の夢の歌)が美しい。
重盛誕生時や血曼陀羅のシーンで流れた曲なのですが、聞いていたら
明子の出産に涙を浮かべる清盛の顔が浮かんできて、そのまま重盛のシーンがぶわっと流れてきました。
明子が倒れて泣く場面、時子になつく所、大叔父上に竹馬を作ってもらうシーン、木登り、真面目にお勉強、
初陣、帰還、そして先週の婚儀まで。
ああ音楽ってすごいな…と思いました。

「遊びをせんとや」の曲のあと、磯Pが「藤本さんは、全ての登場人物に「遊びをせんとや…」のテーマを描こうとしています」
さらりと言われましたが、すごい台詞だと思いました。
こういう信念を持った人が脚本を描いているというのは幸せだなあ。

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最後に質問コーナーがあったので、ツイッター企画どうでしたか?と聞いてみました。
すごく好評だった!そうです。視聴者からもですし、社内でもよく声をかけられるとか。
もともと大河ドラマは難しく、昔は父親などに解説してもらいながら見ていたのが
時代が変わって、今はパソコンを前に調べながら見ている。
そしてこちらに質問を寄せてくださるので、それならばこちらも調べたことをお出ししよう、と。
ツイッターで情報を共有しながら見るというのは、テレビの新しい見方なのではないかと思っています。

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以上でした。で、このあと交流会~という感じの流れだったのですが
磯Pのもとには入れ替わり立ち替わりでご挨拶の方がいらっしゃって全然始まりそうになく、
のんびりとお茶しつつ待っていたら、会場の方が「ゲストさん(いそP)に質問していただいていいですよ」と
誘導してくださったので、今日およびこの大河を作ってくれてありがとうという御礼を申し上げつつ
「スピンオフや未公開映像を見たいんですが、その可能性を高めるためにはどうしたらいいですか?」と伺ってみました。
(しつこいとお思いでしょうが私は見たいんです…)

いそP「未公開映像って、放映してってことですかね?」
私「いやそこまでは。DVDとかの特典映像に入れていただければ嬉しいです。こういうのってプロデューサーの方が決められるんですか?」
いそP「いや、ご意見をお伝えはしますけど、僕に決定権はないです」
私「そうなんですか?」

(本音:美浜のセミナーで「DVDに未公開映像入れて!」のリクに「わかりました!」って
 言ったんじゃないのかーーーいそPーーーー!!!

いそP「編集段階でカットされているものですと、背景の合成もしていないし音も入っていない。素材の状態のものを商品にするためには時間も予算も必要です。
それを出してくれるかどうかはNHKエンタープライズが決めることなんですよね…」
私「なるほど(言われてみればそうだ…撮影済んでんだから出せやと思ってたけどまだ素材なんだ、それ!)
いそP「でもNHKエンタープライズも、録画機器が普及したこの時代にどうやってDVD売るか色々考えてはいるので」
私「こういう特典つけないと、買わないぞ!と、NHKエンタープライズに言うのが、もしかしたら」
いそP「いいかもしれませんね」

ここで他のご挨拶の方がお見えになったのでスピンオフについては聞けず。
美浜のセミナーで「DVDに未公開映像入れて!」って言われて、「わかりました!」って言ったんじゃないのかーーーいそPーーーー!!!と思いましたが
なんというか、お金も時間もかかるから、予算を出してくれる販売元にリクエストしてね!というのは、ごもっともでした。
というか、やっぱりそれしかないのか。


この後交流会があったのかもしれませんが、もうさすがに聞けまい…と思ったので退散しました。
落ち着いたムードの会でした。